メタボリック・イクステリア
ひたすら白い……いや、所々何かのシミのあとがある……天井、か? それに蛍光灯?
「うん? ひゃひゃひゃ、あれだけの傷を負って目覚めるとはね。死神にゃ嫌われたようだね、お前さん」
最初、そのシワだらけの顔についているものが、鼻だとは思えなかった。居住ドーム内で栽培されるナスと比べても良い勝負だと思えるくらい長い鼻など、お目にかかった事がない。その白髪は整えるのが面倒なのか、束ねたそれを団子のように後頭部でまとめていた。
「貴……女、は?」
「アヌ。アヌ・ビスハイル・ファティマという名前のババアじゃよ」
身体をどうにかベッドから起こそうとし、痛みに顔をしかめた。
「動かん方がいい。左上腕部と左大腿部に20センチ以上の裂傷があるそうじゃから。それに、凍傷になっている部分もかなりある。丸二日寝てたとはいえ、疲労もあるじゃろうしの。それでも、医者の見立てじゃ、全治三日というんだから、イクステリアの回復力には呆れてしまうわい」
自分が受けた傷を、思い出す。左腕と胸、左足に包帯が巻かれている。正直、あれだけの出血をして生きていられたのは、イクステリアといえども、幸運以外の何物でもない。
そう思っていると、ベッドの足元がずれるほどのデカイ足音がこちらへ迫ってきていた。扉が壊れるのでは、と思ってしまう勢いで開かれた。
そこにいた男はでかかった。右腕にはフライドポテトの詰め合わせをまとめたバカでかい袋を抱え、左手は忙しなく袋の中に突っ込まれる。背には槌のようなもの―ブレイン・ウエポンだろうか? ……名称・能力まではわからない―をバックパックに入れて背負っていた。
「おばあちゃん、もぐもぐ、前に注文していた、んぐんぐ、リライブ牛のステーキ、んん、まだ届かない?」
「またかいボーボ! リライブ牛のステーキ一トン分は25日に届くって昨日言ったばかりでしょ! それと食いながら喋るんじゃないよっ!」
素晴らしい体格を誇るイクステリアというのは、たくさんいる。
が、間違ってもこういう、肥満と言っても良い方向ででかくはならない。腹はメタボリックが疑われる形で膨らみ、腕は上等のハムのよう。着ているシャツはしわしわのよれよれ、黒いズボンは膝がこすれて光っている有様だ。