別館 ハタハタとカンコ

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イクステリア1-9

過去、実績、人種等は一切問わない。戦果を出してくれるならば、犯罪者であろうとも迎えよう

「じゃあ、もぐもぐ、新しく頼んでいた、もぐ、スーツは?」

「はん、ちゃんと倉庫に用意しとるよ。あんた専用の肥満スーツ、特注品だよ」

肥満スーツ……スーツ技師として、そういう名前のスーツは作りたくない。

「ところでもぐもぐ、おばあちゃん、んぐんぐ、ベッドにいる彼、誰?」

「今回の試験で入ってきた新人の一人だよ」

 巨漢はポテトをつまむのを止め、その細い瞳が、ようやくこちらに向けられた。

「ふーん……じゃあ、クレイグ殺ったの、彼?」

「それがね、傑作だよボーボ。この坊や、クレイグを殺せたのに降伏を迫って、逆にその隙を突かれたせいで、今はベッドの上なんだよ! ここの入隊試験で、降伏を迫った奴なんてはじめてじゃないかい? ひゃひゃひゃ!」頭に響く笑い声。

 ボーボは太い首を傾げる。「あれ? じゃあ誰なの? クレイグ殺ったの?」

「あたしよ。何か文句ある?」黒の短髪の少女は、例の、装甲のほとんどないスーツの上に赤いカーディガンを羽織っただけの軽装で、開けっ放しになっていた扉の前に立っていた。

「ふーん……クレイグ、ボーボの同期なんだよね。ボーボの同期、クレイグが死んだから、もうジャクスンとオラールしかいないのね」

「へー、そりゃ残念。じゃあアイツが寂しくないよう、あんたもこれからあの世に逝く?」

 鈍い金属音が盛大に鳴り響いた。

 ボーボがその頭を砕こうと、右腕のみで振り下ろした槌を、短髪の少女はアゾットの刃に左手を添え、どうにか防いでいた。だが腕力は、左腕しか使っていないボーボに分があるのか、アゾットの刃は次第に槌に押し切られていく。

「反応だけはいいね、お嬢ちゃん」

「スーツも着てないのに速いじゃん、デブ。ちょっとビックリしたよ」

 このままでは殺し合いになる。陰陽は、スーツはどこだ? 早く止めなくては……

「坊や、落ち着きなさいな。そろそろじゃよ」

「新人への挨拶なら、そこまでにしておけ、ボーボ」

 声に、ボーボと少女が後方を―部屋の出口、開け放たれている扉付近―を顧みた。

鼻の少し上を中心点とした、両頬、額、顎にまで達する大きな十字傷。古代生物図鑑で見た事がある『タカ』という鳥類を思わせる鋭く、深い、青の瞳。ウエーブのかかった金髪。

ボーボは槌を背のバックパックに戻すと、右手に持っていたポテトに目を落とした。

「あ〜あ、ポテト、冷めちゃったね……ボーボ、食堂行って何か買って来る。これは、君にあげよう」それだけ言い残し、ボーボは冷めたポテトをベッドの上に置き、部屋から去っていった。

「ルナ、遅いじゃないかい! 本来なら商談がもう始まっている時間だよ!」

「ファティマ婆さん……あくまで『予定』だろう。まだ仕事が全て片付いてない。少し待っていてくれ」ため息をつくと、こちらに向き直ると、左手に持っていた書類を捲る。「クレア・マイム・アーカット、そしてレイ・バーンハルトか。今時、ミドルネームが無いのは珍しいが……まあいい。私はルナ・セタンタ・エイティス。ここのゴロツキ共を束ねている。ここでは過去、実績、人種等は一切問わない。戦果を出してくれるならば、犯罪者であろうとも迎えよう」

「エトランゼ13って、ミュンツァーと組んでミュンツァーの第13師団として今は動いているはずよね? なのに、戦力になれば犯罪者、例えばアーロン・シュサィア・フォッケゼメルツであっても迎えるの?」

混ぜっ返すように問う黒髪の少女―話の流れから判断すれば、彼女が『クレア』か―試すように問う。

 ルナはその言葉に、不敵にも唇の端だけを吊り上げて、答える。

「過去、実績、人種等は一切問わない。戦果を出してくれるならば、犯罪者であろうとも迎えよう。私は先程、そう言ったはずだが?」

 答えにクレアは愉快そうに口笛を吹いていた。

クローグ村で1000人近い民間人を全て虐殺した、最悪のイクステリアでも迎えるとは……言ってくれる。

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