別館 ハタハタとカンコ

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イクステリア1-1

現状把握

 酸性雪を踏む足音がどの辺りから聞こえてくるか懸命に聞き分けようとするが、移動速度があまりにも速く、位置が特定出来ない。酸性林と闇に溶け込んだその姿を捉えるべく必死に周囲を探るが、見えるのは夜の黒と森の緑のみ。

 何かが、空気を裂くような異音がかろうじて背後から聞こえた。

 反射的に身を左に捩る。頬の辺りを、雪とは異なる冷たい何かが掠めていく。吐き出す吐息が白く染まる。歯が噛み合わずに鳴っているのは、寒さの為だけではない……

 こんな、訳もわからずに戦争に巻き込まれて……死んでたまるか!

 攻撃はどこからだと、憤怒の視線を周囲に向ける事すら出来なかった。眼前には、八本もの氷の刃が自分の身体を食い破るべく、津波の如く押し寄せてきていたのだから。

 右手に持つ短剣―陰―で、眼前に迫る冷たい兇器を打ち落とし、返す刃で心臓と右肩に迫っていた氷刃を払う。左手に持つ短剣―陽―で、頭部を襲う、一際巨大な氷塊を叩き割る。

 そして、たった今揮った陽の刃に、背後から黒い影が自分目掛けて駆けてきている事に気付いた。加えて前方からは三本の氷刃が今まさに、胴目掛けて飛来する!

 双方を迎撃しようと、素早く右半身のみを敵手に向けようとするが……瞬間、身体が崩れた。視界が急転し、最終的には酸性雪が降る暗い空が映し出された。

氷の刃が割れる音。そして、雪に覆われた白い大地に、自分の身体が倒れた衝撃がスーツを通して伝わってきた。雪に足を取られ転倒したのだと理解するのと同時に、身を転がして必死に相手から距離を稼ぎ、上半身のバネを用いて素早く起き上がる。

両の手に持つ剣に意識を集中させつつ、訓練で、友人に習った事を思い出す。

(敵と自分の力の差くらいすぐ見分けろぉ! 自分が上だと判断したらすぐ倒す、下だと判断したら逃げる! 勝てる状況を作るのは、逃げてからでいいんだよ!)

 左右を見渡す。酸性雪によって白く染まった大地と、夜の闇に屹立する、枯れた樹木の群れ。

 敵手に背を向け、離脱を図る。氷刃から身を守るべく木立が盾になるようジグザクに走る。

 所々に血痕がある。そして、物言わなくなった屍がいくつも酸性雪の上で蹲っている。

 何が起こったのか、未だによく理解出来ていない。

 考える余裕があったら、どうやって戦うか、あるいは逃げるのかを考えるべきだというのは理解しているが、それでも思わずにはいられなかった。

 どうして俺は、今、こんな所で殺し合いをしているのだろうか、と。

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